その3 遺伝が原因の場合
遺伝で起こりやすい多発性嚢胞腎について調べました。そのほか環境遺伝についても紹介します。
慢性腎臓病の遺伝原因「多発性嚢胞腎」とは?
慢性腎臓病の原因となる「多発性嚢胞腎」とは、両方の腎臓にできた多発性嚢胞がだんだんと大きくなっていき、腎機能が低下してしまう病気です。遺伝性腎疾患の中でも、もっとも頻度が高いと言われています。
尿細管の太さを調節する機能を持つ「PKD遺伝子」が異常を起こし、発症後は70歳までに約半数が透析を導入しています。
多発性嚢胞腎の症状は
発症しても30~40歳代まではほとんどが無症状で経過します。その後病気の進行に伴い、お腹が張ったり圧迫感を感じたりする「腹部膨満感(ふくぶぼうまんかん)」の症状が現れるのが特徴です。これは嚢胞が大きくなるにつれて腎臓や肝臓も大きくなり、周囲の臓器を圧迫するためです。これによって腹部に膨満感を感じるようになったり、食欲がなくなったりします。
多発性嚢胞腎の治療法は
多発性嚢胞腎の治療は根本的なものはなく、腎機能保護を目的とした保存的治療を行います。尿路感染や結石の予防のため十分な水分摂取をする必要があります。体の水分が足りないと尿を濃くするためのホルモンによって嚢胞が大きくなってしまうからです。ただしこの嚢胞形成に関しては、現在抑制が期待される薬「バソプレシン受容体拮抗薬」が現在臨床治験中ということで、期待が集まっています。
腎臓代替療法としては血液透析や腹膜透析、腎移植などがあります。透析を開始しても尿量が減少する、腎臓が腫大する場合には腎動脈塞栓療法(TAE)に切り替えることもあります。
疾患だけじゃない…「環境遺伝」にも要注意!
慢性腎臓病は喫煙や食事嗜好、運動習慣、ストレスなど、環境が原因となることもあります。食生活など両親から受け継いだ遺伝的な因子は、「変えよう」と決意しないとなかなか難しいものがあります。腎臓病と生活習慣は関わり合いが深いので、環境因子をなるべく排除していきましょう。
