知って欲しい、慢性腎臓病(CKD)の原因・症状・予防方法

よくわかる慢性腎臓病(CKD)ガイド 予防・早期発見・合併症防止のためにできること
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不規則な生活と慢性腎臓病

腎臓は「血液中の老廃物をろ過して尿をつくる」だけの臓器と考えられがちですが、「血圧のコントロール」「赤血球の造血」「血液のpHおよびミネラルバランスの調整」「骨代謝の調整」など、体の健康維持に必要な数多くの機能を担っています。不規則な生活が続いても大きな体調の変化が現れないよう、見えないところで生理機能の調整を行ってくれるため、わたしたちは普段、そのはたらきの重要性に気づきません。

しかし、過労や心理的なストレス、睡眠不足など、不規則な生活からくる心身の疲労は、腎臓にも大きな負担をかけています。24時間休むことなくはたらき続ける腎臓には、損なわれた機能を回復する休養時間が必要です。それがないと疲労が蓄積し、腎機能の低下を招いたり、慢性腎臓病につながる生活習慣病のリスクを高めたりすることがわかってきました。

腎臓の健康を保ち、慢性腎臓病のリスクを減らすには、どのような点に気をつけて日常生活を送ればよいのでしょうか?

睡眠不足

はたらきづめの腎臓が唯一休めるのは、外界からの刺激が遮断され、体内の生理機能が抑制される睡眠中です。睡眠中に腎臓をしっかり休ませることができないと、腎機能が少しずつ衰えてしまいます。

2015年、循環器研究で著名なブリガム・アンド・ウィメンズ病院が発表した、米国女性4000人超を対象に行われた大規模調査によると、1晩あたりの睡眠時間が5時間以下の女性は、睡眠時間が7~8時間の女性に比べて、腎機能が衰えるリスクが65%も高いことがわかりました。

腎機能を休ませるためには、睡眠時間を長く取るだけでなく、腎臓が休めるような状態をつくることも大切です。そのために気をつけたいのが「寝る前の3~4時間は食事を取らないこと」。食べ物の消化中、腎臓は水分や塩分の調節をする必要があり、ゆっくり休むことができないからです。

十分な睡眠は、慢性腎臓病の原因となる肥満や糖尿病のリスクを軽減することも明らかになっています。規則正しい生活を心がけ、休養や睡眠を十分に取り、腎機能を回復させることが肝心です。

ストレス

ストレスは腎臓への血流を低下させます。そのため、ストレスを受けると腎臓のはたらきが悪化して、水分や塩分、老廃物を正常に排出できなくなるため、体全体に不調をきたすようになります。

たとえば、突発性浮腫という原因不明のむくみが起こる理由の1つとして、ストレスの存在が考えられています。この疾患を発症するのはほとんどが女性で、患者さんはストレスの多い仕事に就いている人が多く、ストレスが多いほどむくみも強くなる傾向があるからです。

また、ストレスは尿酸値を上昇させるという報告もあります。大阪市立大学の研究グループは2017年、尿酸が正常値の範囲内であっても、一定限度を超えると腎臓への血流を低下させ、腎機能を損なうとする研究結果を発表しています。

ストレスは体の免疫力を低下させ、風邪や感染症などにかかりやすくすることも知られています。細菌やウイルスに感染すると、腎臓の糸球体の毛細血管が炎症を起こし、腎機能が著しく低下します。また、薬の種類によっては腎臓から排出される際、尿細管を傷める場合もあります。必要な薬以外は飲まないことも大切です。

腎臓を労わるためにできること

そのほか、腎臓をいたわるために普段からできることをまとめました。

塩分を控えバランスのよい食事を摂る

腎臓は体内の塩分量を調節し、血圧の調整を行っています。塩分の濃い食事は腎臓に負担をかけ、腎機能の低下につながります。

厚生労働省が発表した「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、1日あたりの塩分摂取量(目標量)を、18歳以上の男性8.0g未満、18以上の女性は7.0g未満と定めています。 ところが、2018年9月に発表された「平成29年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、2017年における成人1日あたりの塩分平均摂取量は、男性で10.8g、女性で9.1gもあることがわかりました。

年齢別に見ると、男女ともに20代がもっとも少なく、60代までは年齢とともに摂取量が増加していく傾向にあるそうです。腎機能は加齢によってもゆっくり低下していきます。腎臓の負担を少しでも軽減するために、塩分を控えバランスのよい食事を摂るようにしたいですね。

十分な水分を摂る

体内の余分な塩分や老廃物を排出するには、十分な水分を摂ることが大切です。健康な成人の場合、夏場で1.5~2L、冬場で1~1.5Lの水分を飲み物として摂取する必要があると言われています。

夏場は特に汗で水分を失いやすいので、こまめに水分補給をするようにしましょう。腎機能が低下していると、水分摂取量を制限される場合もあります。担当の医師を相談しながら適切な水分量を摂取するようにしてください。

排尿をがまんしない

おしっこをがまんして膀胱に尿がいっぱいまでたまってしまうと、行き場を失った尿は腎臓に逆流し、糸球体を圧迫してダメージを与えます。長時間排尿しないでいると、膀胱内に細菌が発生しやすくなるため、尿と一緒に細菌が腎臓に入り、糸球体が炎症を起こしてしまいます。最悪の場合、腎盂炎を発症することも。十分な水分を取ったら、がまんせずに、適切なタイミングで排尿するよう心がけましょう。

体を冷やさない・温水浴で体を温める

体温が下がると血行が滞り、腎臓の血流が悪化してしまいます。入浴時はぬるめのお湯にゆっくりつかり、体の中まで温まるようにしましょう。体が温まり血行がよくなると、新陳代謝も盛んになります。ゆったりと入浴することでストレスも軽減され、心身両面の健康回復につながります。入浴後は水分の補給を忘れずに。

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