知っておこう慢性腎臓病と高血圧の関係
高血圧と腎臓機能の低下には密接な関係があります。ここでは、慢性腎臓病の根本的な原因と対処法についてまとめました。ぜひ、病気の予防と改善に役立ててください。
慢性腎臓病と高血圧の密接な関係
慢性腎臓病と高血圧の関係は非常に密接です。腎臓のナトリウム調節機能の異常が、ほとんどの高血圧の原因であると言えるからです。まず、腎臓の機能が低下すると余分な水分と塩分が排泄できなくなり、血液量が増加します。すると血圧が上昇し、さらに腎臓への負担が増します。高血圧が腎臓の機能に負担をかけることで腎臓が悪化し、さらなる高血圧を招くのです。
※慢性腎臓病の悪循環※
- 腎臓…腎機能が低下することで、塩分や水分をろ過できなくなる。
↓ - 血液…ろ過できなかった塩分濃度を薄めるため、血液量が増える。
↓ - 心臓…血液量が増えたので、血圧を上げる。
↓ - 血液…より多くの血液が腎臓に流れ込み、腎臓の負担が増える。
↓ - 腎臓…腎機能が低下する。
このような悪循環を繰り返していては、腎機能の回復は見込めません。まずは、しっかり血圧をコントロールすることが、腎臓病を改善する第一歩となるでしょう。
腎臓の機能不全が高血圧をもたらすワケ
腎臓の機能が低下すると、高血圧を引き起こす3つの問題が発生します。よって、高血圧が改善しない場合は、腎臓の検査を行う必要があります。
問題1.塩分と水分の調節
過剰な塩分の摂取が高血圧の原因となることは誰もが知っています。腎臓は余分な塩分を水分(尿)とともに体外へ排出する働きを担っていますが、腎機能が低下すると塩分と水分の排出が上手くいかなくなります。すると血液の量が増加し、血圧が上がってしまうのです。
問題2.血圧を上げるホルモンの分泌
腎臓は「レニン」と呼ばれる酵素を分泌しています。この酵素は血圧を上げる働きをする「アンジオテンシンⅡ」というホルモンを生産するために必要な物質です。レニンによって腎臓は一定の血圧を管理しているのです。しかし、腎機能が低下すると血圧の調節機能も低下することから、高血圧につながる傾向があります。
問題3.抹消血管の硬化
腎臓は無数の「末梢血管」から成っています。老廃物や余分な水分を含んだ血液は腎臓でろ過され、キレイになり心臓へ戻ります。しかし、腎臓の機能が落ちて血圧が上がることで末梢血管が硬くなってしまいます。すると血液が流れにくくなり、末梢血管の抵抗が大きくなってさらに血圧が上昇してしまうのです。
原因がわかる高血圧の半数は『腎臓』が原因だった
高血圧には原因がはっきりしない「本態性高血圧」と、原因が明らかな「二次性高血圧」の2種類があり、種類の違いによって治療方針も変わります。特に二次性高血圧に関しては、原因の半数が腎臓に起因していることから、根源的な治療が必要となります。
本態性高血圧(原因がはっきりしない高血圧)
- 原因がはっきりしない高血圧である。
- 日本人のおよそ90%が本態性高血圧である。
- 体質、塩分の過剰摂取、肥満、ストレス、運動不足、過度の飲酒や喫煙などが要因とされている。
二次性高血圧(原因が特定できる高血圧)
- 原因が明らかな高血圧である。
- 高血圧の約10~15%が二次性高血圧である。
- 通常の降圧薬では効果が見込めない。
- 根源的な治療が必要で、原因が取り除ければ改善する。
二次性高血圧は主に、腎臓機能に関わるものと、血圧を上げるホルモンの分泌異常の2つが原因とされています。そして、具体的には「腎実質性高血圧」と「腎血管性高血圧」に分けられます。
腎実質性高血圧
腎機能が低下することで塩分や水分が体に溜まり、血圧が上昇します。腎臓機能の低下がゆるやかな場合は症状の改善が難しく、降圧剤を調整しながら治療にあたります。腎不全の食事療法と同様に、塩分制限が重要です。
腎血管性高血圧
腎臓に血液を送る「腎動脈」が狭窄することで高血圧を引き起こします。尿を作るために血圧を上げ、狭窄した部分に血液がたくさん流れ込んでしまうため高血圧となります。比較的に重度の高血圧に陥ることが多く、超音波やCTなどの画像検査で診断します。特に若年者は大動脈炎症候群や線維筋性異形成という病気を併発している場合もあり、早期の診断が重要です。
血糖値と高血圧の関係にも要注意!
血糖値が関係しているのは「糖尿病」だけだと思っている人が多いと思いますが、実は「高血圧」とも深く関わりを持っています。
一般的に血糖値が高ければ、糖尿病のリスクが上がります。しかしそれと同時に、血糖値が上がると血液もドロドロの状態となり、血圧も上がってしまうのです。実際に糖尿病患者の約60%が高血圧を患っており、その数は糖尿病を患っていない人の約2倍にあたります。
糖尿病患者が高血圧を起こしやすい理由として考えられるのは、「糖尿病腎症」を合併しているからです。糖尿病腎症とは、腎臓の毛細血管が増え過ぎたブドウ糖によって不調を起こす病気です。この病気になると腎臓が血圧を上昇させるホルモンを分泌したり、血液のろ過機能が落ちたりするので、血圧が上昇してしまうのです。
そして、慢性腎臓病の原因疾患としてトップに挙げられるのが、この糖尿病腎症です。日本透析医学会の公表資料によると、透析治療を受けている患者の約半数が糖尿病腎症を合併しています。その他にも、動脈硬化や腎硬化症などの生活習慣病も慢性腎臓病の大きな原因となっていますが、特に糖尿病や高血圧は、腎臓疾患と切っても切り離せない関係だと言えるでしょう。慢性腎臓病を予防・改善するためには、原因疾患の治療とコントロールが重要です。
意外と知らない?高血圧の基準とは
血圧の正常値の基準は、改訂されるごとにより厳しくなっています。「高血圧治療ガイドライン2014」が目標血圧値の基準となりますが、病院で測定した血圧が140/90mmHg以上なのに対し、家庭での測定数値は135/85mmHg以上が高血圧となります。
一般的に家庭での測定は病院より低めになることが多く、そのことから基準値も少し低めに設定されているのです。現在は家庭で血圧を測ることが増えていますが、毎日、決まった時間に同じ条件で測定した血圧は、医師にとっても大切な診断材料となります。
こまめに測定値を記録しておくことで、高血圧を未然に防ぐだけでなく尿卒中や虚血性心疾患などの病気を予測できるので、しっかり自己管理をしましょう。