知って欲しい、慢性腎臓病(CKD)の原因・症状・予防方法

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骨粗しょう症

慢性腎臓病を発症すると腎機能が徐々に低下し、症状が進行するとさまざまな合併症を引き起こします。余分な水分や老廃物がうまく排泄できずに「むくみ」や「だるさ」が起こる、赤血球をつくれず「貧血」や「めまい」が現れるなど、その症状は多岐にわたります。骨粗しょう症もその1つです。

骨粗しょう症とは、骨の構造がスカスカとしてもろくなり、骨の強度が低下して骨折しやすくなる疾病です。加齢によってゆっくりと進行する「原発性骨粗しょう症」と、疾患や薬物、栄養障害など二次的な原因から発症する「続発性骨粗しょう症」の二種類があります。

一般社団法人日本骨粗鬆症学会が発表した「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」には、慢性腎臓病が後者と密接な関連性をもち、早期のCKDにおいても骨折リスクが上昇することが明記されています。近年の研究ではそのメカニズムが明らかにされ、現在、慢性腎臓病は、続発性骨粗しょう症の原因としてもっとも多い内分泌性の疾患と考えられるようになりました。

慢性腎臓病と骨の健康

腎臓には体内のカルシウムやリンの量を調節する機能があります。カルシウムもリンも、骨の形成に欠かせないミネラルです。

骨の材料となるカルシウムは、腸管から吸収され血液によって骨に運ばれます。腎臓はカルシウムが腸管から吸収されるために必要な「活性型ビタミンD」という物質作っています。腎臓が正常にはたらいていれば、カルシウムを効率よく吸収することができるため、骨は十分な強度を保つことができます。

骨の形成にはリンも必要ですが、血液中にリンが多すぎると、腸管からカルシウムをうまく吸収できなくなってしまいます。そのため、腎臓は余分なリンを排出して、体内のカルシウムとリンのバランスを調整しています。

骨粗しょう症の原因

慢性腎臓病で腎機能が低下すると、腎臓は活性型ビタミンDをうまく作れなくなります。すると、食事でカルシウムを摂っても体に吸収することができなくなり、血液中のカルシウム濃度が下がってきます。

カルシウムは骨の材料となるだけでなく、体内のさまざまな代謝に係わる重要なミネラルです。そのため、不足すると、骨の形成が抑制されるだけでなく、代謝に必要なぶんを補おうと、骨からカルシウムが溶け出すようになってしまいます。

その指令を出すのが喉の両脇にある「副甲状腺」です。カルシウム不足を感知した副甲状腺が大量の「副甲状腺ホルモン(PTH=parathyroid hormone)」を分泌します。この状態が続くと、骨からのカルシウム放出が止まらなくなる「二次性副甲状腺機能亢進症」になります。慢性腎臓病の患者さんは、二次性副甲状腺機能亢進を併発するケースが多く、これが、骨がもろくなって折れやすくなる骨粗しょう症を引き起こすのです。

また、腎機能が衰えてリンの排出が滞ることも体内のカルシウム不足の要因となっています。血液中のリン濃度が上昇するため、腸管から吸収できるカルシウム量がますます減ってしまうからです。

骨粗しょう症を予防する治療

骨粗しょう症の患者5313人を対象に行われた海外の研究によると、慢性腎臓病を併発している人はそうでない人に比べて、骨折リスクが高くなっていることがわかりました。

慢性腎臓病の人は骨折リスクが高くなる

日本透析医学会の統計調査には、透析患者は、太もも付け根の骨折リスクが、健康な人に比べて5倍高くなるという報告もあります。

骨折はQOLを大きく下げ、治療にも影響を与えます。慢性腎臓病を発症したら、骨粗しょう症を起こさないよう、食事制限や薬物療法など、ステージに応じて適切な治療を受けることが大切です。

慢性腎臓病ステージG1〜G2

ステージG2までは、骨折リスクの上昇について報告は上がっているものの、慢性腎臓病が直接それに関与しているという確証は得られていません。

G1~G2ステージでは、おもに血液中のリン過多によって起こるカルシウムの代謝異常が、骨の脆弱化を引き起こすと考えられています。厚生労働省の定めた「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、1日のリンの目安量を18歳以上の男性で1000mg、女性800mgとしています。

同省の「国民健康・栄養調査(平成29年)」を見ると、実際の摂取量が男性1064mg、女性939mgであることがわかりますが、これには食品添加物に含まれるリン酸塩は含まれていません。インスタント食品や清涼飲料水など、食品添加物の多い加工食品を口にすることが多い現代の食生活では、リンを摂りすぎてしまう傾向にあるので注意が必要です。

個別の症状にもよりますが、この時期はまだ骨粗しょう症薬などを用いず、リン・塩分摂取の制限や、ビタミンD摂取強化など、基本的に食事療法で対応します。

慢性腎臓病ステージG3〜G5

eGFRが60ml/分未満にさしかかるこの時期になると、二次性副甲状腺機能亢進症が起こり、骨折など目に見える形で骨粗しょう症の症状が現れるようになります。

G3以上の慢性腎臓病では、太もも付け根の骨折リスクが2~5倍になるなど、急速に骨強度が下がっていきます。その最大の原因は、副甲状腺ホルモン(PTH)の過剰な分泌によって、骨からカルシウムが溶け出す「骨吸収」が促進されることです。食事療法を続けるだけでなく、PTHの分泌を正常化するために薬物治療の必要が出てきます。

食事療法に関しては、ステージG3b以降、たんぱく質の摂取制限が0.6~0.9gとなります。たんぱく質1gあたり約15mgがリンの摂取量の目安になりますので、体重60kgの人なら、リンの摂取量を1日580~810mgに抑えなければいけません。

薬物治療で処方される治療薬には、大きくわけて「骨吸収を抑制する薬」と「骨形成を促進する薬」があります。慢性腎臓病のステージだけでなく、個別に抱えている基礎疾患なども鑑みて治療薬を選択することになります。

骨粗しょう症の治療薬

現在使われている骨粗しょう症の治療薬には、次のようなものがあります。

活性型ビタミンD製剤

腎臓が作れなくなった活性型ビタミンDを補う薬です。骨吸収を促進する副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌を抑え、骨からカルシウムが失われるのを防ぐ作用があります。ステージG3以降に起こる二次性副甲状腺機能亢進症に有効です。

カルシトニン

骨吸収で骨を分解する「破骨細胞」に直接はたらきかけて、骨からカルシウムを放出させないようにする薬です。骨吸収を抑制するだけでなく、同時にカルシウムとリンの沈着を助けて骨形成を促進させることで症状を改善します。

ビスホスホネート

カルシトニン同様、破骨細胞に作用して骨吸収を阻害します。がんの骨転移の進行を抑える効果などを併せ持つ非常に有用な薬ですが、顎骨壊死や粘膜の炎症といった副作用の報告も多く、投与には十分な注意が必要です。

デノスマブ

抗RANKL抗体と呼ばれるものです。破骨細胞を作る際に必要な「RANK-RANKL系」という過程を妨害して、破骨細胞を生成できなくします。骨吸収の抑制効果は強力で、投与後すぐに効き目が出る薬です。

選択的女性ホルモン受容体調整薬(selective estrogen receptor modulator:SERM)

骨量の増加に係わる女性ホルモン(エストロゲン)の代わりに骨にはたらきかけ、骨吸収と骨形成のバランスを整える薬です。閉経後、エストロゲンが急激に減少することによって発症する骨粗しょう症の治療に使います。

テリパラチド(PTH製剤)

PTHから34個のアミノ酸を切り出したポリペプチドを成分とする薬です。PTHは破骨細胞のはたらきを活性化させますが、テリパラチドは一定の間隔をおいて連続使用することで、骨の形成に携わる「骨芽細胞」を破骨細胞よりも強く活性化することができるため、骨量を増やすことができます。

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