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腎性貧血

腎臓の機能が低下すると「腎性貧血」という合併症を起こすことがあります。腎性貧血とはどのような貧血でしょうか? 通常の貧血との違いや症状、治療法についてまとめました。

腎臓貧血とは?

腎臓貧血とは、腎臓の働きが低下することにより腎臓から必要な量のエリスロポエチンがつくられず、赤血球を作る能力が低下して起こる貧血です。よく聞く「貧血」は体の鉄が不足してヘモグロビン産生が不十分になる「鉄欠乏性貧血」であり、「腎臓貧血」とは原因が異なります。そのため鉄を補給しても腎臓貧血は改善しません。

腎臓貧血の症状

慢性腎臓病がステージG4~G5に進行すると、血液中のヘモグロビン値(Hb)が低下して貧血を発症するようになります。出血や鉄分不足、溶血など、貧血の原因にはいくつかありますが、腎機能低下に伴う貧血を「腎性貧血」と言います。

ヘモグロビンは、赤血球のなかに存在する成分で、全身の組織に酸素を運ぶ役割をもっています。そのため、腎性貧血になると、一般的な貧血同様に、動悸や息切れ、めまい、倦怠感、顔面蒼白といった症状があらわれます。しかし、腎性貧血はゆっくりと進行するため、症状に体が慣れてしまい、自覚することが難しい貧血です。

通常、ヘモグロビン値が男性で13.5g/dL以下、女性で11.5g/dL以下になると貧血の可能性があると言われますが、腎性貧血ではヘモグロビン値が10g/dL未満に減ってしまいます。このような貧血状態では全身で酸素不足が起こります。それをカバーしようと常に心臓に負担がかかるため、心血管障害を起こすリスクが高くなるため注意が必要です。定期的な血液検査でヘモグロビン値をチェックして、早めに治療を行うようにしましょう。

腎臓貧血の原因

腎性貧血は、腎機能の低下に伴い、腎臓から分泌される造血ホルモン「エリスロポエチン(EPO)」がうまく作れなくなることが原因で発症します。

腎臓は、体内の生理機能を調整するためにさまざまなホルモンを分泌しています。EPOはそのうちの1つで、骨髄の造血細胞にはたらきかけて赤血球の産生を促進する作用をもっています。慢性腎臓病で腎機能が低下するとエリスロポエチンの分泌が減り、赤血球が正常に作られなくなるために貧血が起こるのです。

血液透析を行っている患者さんは、鉄欠乏性貧血を併発している場合もあります。透析が始まると、体内の鉄を失いやすくなるのです。一般社団法人日本透析医学会の「慢性血液透析患者における腎性貧血治療のガイドライン2004年版」には、透析患者はダイアライザーへの残血と採血検査で、年間約2gの鉄を喪失しているため、鉄欠乏に陥りやすいことが記されています。

また、腎不全では炎症などによって、血液中にヘプシジンというたんぱく質が増加します。ヘプシジンは体内の鉄代謝を制御しているホルモンの一種で、腸壁からの鉄吸収を阻害するため、食事から十分な鉄分を吸収できなくなります。

鉄剤の使用について

ヘモグロビンと赤血球を作るためには十分な鉄が必要です。「体内の鉄が足りているかどうか」「鉄代謝が正常に行われているかどうか」は、「血清フェリチン値」と「トランスフェリン飽和度(TSAT)」を調べることでわかります。

フェリチンは内部に鉄を貯めることができるたんぱく質で、肝臓や脾臓内に鉄を貯蔵するはたらきを担っています。血清フェリチン値は、体内に貯蔵されている鉄の量を示しています。

トランスフェリンは、フェリチンから取り出した鉄を運ぶたんぱく質です。TSATは、鉄を運んでいるトランスフェリンの割合を示していて、その値を見れば貯蔵した鉄が正常に活用されているかどうかを知ることができます。

つまり、「血清フェリチン値が低い=体内の鉄が足りていない」「TSATが小さい=鉄代謝が低下している」というわけです。フェリチン値が100ng/mL以下、もしくはTSATが20%以下になると、「鉄欠乏」と診断されます。

日本の慢性腎臓病治療においては、フェリチン値とTSATがともに鉄欠乏だった場合に、鉄剤を投与されることが推奨されています。

鉄剤使用のガイドライン

フェリチン値≦100ng/mL  かつ  TSAT≦20%

しかし、近年は、鉄剤を積極的に使用することによって、心血管障害や運動能力、QOLなどが改善することがわかりつつあり、このガイドラインは緩和される傾向にあるようです。日本透析医学会のガイドライン2015年版では、鉄利用率が低下する疾病(炎症やがん)がなく、フェリチン値<100ng/mLまたはTSAT<20%の場合には、フェリチン値が300ng/mLを超えないように注意しながら鉄剤を使用することが提案されています。

鉄不足は食材以外で補う

鉄剤には、口から服用する「経口鉄剤」と、静脈注射で投与する「静注鉄剤」があります。鉄剤の投与は経口が原則とされていますが、経口投与で改善が十分でない場合や、消化器疾患などで経口投与が難しい場合は静脈投与が用いられます。

どちらも同等に貧血改善効果が高く、鉄剤だけでも十分に鉄不足を解消することができます。そのため、鉄剤投与を行っているときは、日常生活で食事から鉄分を摂取する必要はありません。

レバー・赤身の肉・貝・チョコレート・プルーンなど、鉄分を多く含む食品は貧血予防によいと言われますが、これらの食品を過剰に摂取すると、血清カリウムやリン濃度が上昇するため腎臓に負担がかかります。鉄剤だけでも十分な鉄を補給できるので、食事は栄養制限に沿った消化のよいものを取るようにしましょう。

造血ホルモン剤

腎性貧血は慢性腎臓病の代表的な合併症の1つですが、1980年代後半までは効果的な治療薬がなく、症状の改善には大量の鉄剤や輸血が必要でした。当時すでに、腎性貧血の原因が、腎臓で産生されるエリスロポエチン(EPO)の分泌低下による赤血球の減少であることが解明されており、世界中の医薬品メーカーがEPOの製剤化にしのぎを削っていました。

1983年、世界に先駆けEPOのクローニングに成功したのは、アメリカのバイオベンチャー企業アムジェンです。アムジェンが手がけた遺伝子組み換えEPOは、1989年、FDAの承認を受け、世界初の造血ホルモン剤「エポジェン」として医療の現場に送り出されました。これを機にアムジェンは世界最大のバイオテクノロジー企業へと成長。腎性貧血の治療も大きく進歩することとなったのです。

その後、遺伝子組み換えによって複数のEPO製剤が開発されており、現在はこれらEPO類似化合物を総称して、赤血球造血刺激因子製剤(erythropoiesis stimulating agent:ESA)と呼んでいます。

EPO製剤も万能というわけではなく、EPO抵抗性貧血といってEPOが効きにくいタイプの腎性貧血もあります。そのため、最新の臨床研究では、「ポストEPO製剤」として「HIF活性化薬」の開発が進んでいます。

HIFとはhypoxia-Inducible Factor(低酸素誘導性因子)の略で、高地などの低酸素状態に人の体が順応する生理的な反応を活性化させる薬です。細胞への酸素供給が不足すると分泌されるHIFは、EPOを増やすとともに、鉄の利用効率を向上させて赤血球の産生を促進します。そのはたらきを利用して貧血の治療しようというわけです。

ESAが注射剤であるのに対し、HIF活性化薬は経口剤で投与しやすい薬剤です。ESAが効きにくい患者さんにも効果がある可能性があり、次世代の腎性貧血治療薬として期待されています。

腎臓貧血の治療

腎性貧血では、個々の症状に応じてESAと鉄剤の投与で貧血管理を行います。原則として、ヘモグロビン値(Hb)が10g/dL以下になったらESAの投与を開始して、ヘモグロビン値を11g/dL~13g/dLの範囲内に止まるようにコントロールします。

貧血と診断される基準が男性で13.5g/dL以下、女性で11.5g/dL以下ということを考えると「もう少し上げてもいいのでは?」と感じますが、腎性貧血を発症した患者さんの場合、13g/dLを超えると心血管症のリスクが高まる可能性があるため、Hb値を上げすぎないようにしなければいけないのです。

造血には鉄が不可欠なので、ESAが効果を発揮するためには鉄剤の投与も必要です。鉄剤については、フェリチン値とトランスフェリン飽和度(TSAT)をもとに投与を検討します。一般的に「血清フェリチン値100ng/mL以下」かつ「トランスフェリチン飽和度(TSAT)20%以下」になった場合には、鉄剤の使用が推奨されています。

早期から適切な貧血コントロールを行うことで、腎性貧血の悪化は防止できます。慢性腎臓病と診断されたら定期的な血液検査でHb値をチェックし、できるだけ早めに治療を受けることが大切です。

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